日本画とは何か?
ーその答えの先に。弔い役としての日本画家ー

日本大学明誠高等学校研究紀要第32巻掲載

はじめに

1、日本画とは?

2、材質・素材からのアプローチ

3、属性からのアプローチ

4、歴史からのアプローチ

5、システムからのアプローチ

6、日本画とは?/結論

7、現在の日本画の問題点

8、今後の日本画の展望

9、私にとっての日本画

おわりに

<参考文献>

、、日本画とは?/結論

<日本画を定義づけてみる>

 では、最後に材質・素材から、特徴などの属性から、歴史的な背景から、システムからの4つの面からアプローチした「日本画とは何か?」を、整理し、あえて結論付けたいと思います。

 主に膠と顔料を使って描かれているか、それに準じるもの。広義的には日本人が過去から描いてきた絵画全般をいうが、狭義的には、明治初頭、欧米に対抗して、日本人のアイデンティティーを確保するため創出された日本人による絵画システム。当初から西欧化に対抗して創られたシステムであるため、理念的な定義付けが難しい。「日本的」でありながら「国際的」であることも同時に求められたため、ある種の分裂に陥ち入り、それまでの日本美術が持っていた装飾美、機能美、造形の強さ、遊び心、物語のおもしろさ、斬新さ、など、ほとんどの良さを意図的に排除し、西洋芸術に匹敵、もしくは超える精神世界の表現をことさら強調したために、抽象的で観念的になってしまった。さらに「日本的とは何か?」がはっきりと問われないままに、西欧と日本の折衷化さえもが日本的とされたため、余計に意味不明になり、その曖昧さも含めて日本画の根拠となってしまった。大正から昭和にかけて、国策としての日本画から自立しようという個人主義・芸術至上主義的運動も一時期盛り上がったが、戦争へと突入する歴史の過程で失われてく。戦後は、国民の平和志向の後押しを受けた形で国民的な画家も生まれる一方、自律的に純粋な芸術運動として盛り上がった時期もあった。しかし、多くの日本画家が経済活動やシステムに守られて保守化していったため、芸術の自律性はしだいに失われていき形骸化してきている。逆にそれらに縛られない個別に内面化し歴史から切り離されたオタク的な若者たちによって、新しい動きも芽生えはじめている。

 ということで「日本画とは?」という設問に私なりに答えを出しました。最初に申し上げた通り、答えがないものにあえて、答えを出してみたわけですが、その上で、「現代の日本画の問題点」、「日本画の今後の展望」と、「私にとっての日本画」を考えていきたいと思います。

新着情報 /作品 /略歴 /お知らせ /技法 / 紀行/対談 /草馬の絵 /作家紹介 /雑感 /遊び場 /夢工房 /掲示板 /ブログ /お便り /リンク /HOME