日本画とは何か? | |||||||
、材質・素材からのアプローチ〈絵の具の成り立ち〉まず、材料から考えてみましょう。例えば、日本画以外の「 〜画」というのをイメージしてみてください。例えば「油彩画(油絵)」「水彩画」「パステル画」「アクリル画」「木炭画」など、油、パステル、アクリル、木炭、基本的に「〜画」を構成しているのは材質です。では、絵の具の材質が違うという事はどういうことなのか、そこから考えていきましょう。普通、色の粉(粒子)を紙の上においただけでは色の粉は画面から落ちてしまいます。なので、色の粉を画面に何らかの方法で、くっつけなければなりません。そのくっつけ方には大きく3通りあります。 1、顔料が基底材(画面)の表面の凹凸にただひっかかっているだけのもの。 画面の上に粒子がただひっかかっているだけなので、たたいたり、こすったりすれば粒子は落ちてしまいます。例えば、木炭画や鉛筆画、パステル画などが、これにあたります。特徴としては接着剤を用いていないので、粒子の発色がそのまま保たれる反面、先ほど述べたように、画面にただひっかかっているだけなので、固着力は非常に不安定です。 2、基底材に染み込んでいるもの。 インクや染料など。粒子が基底材の中にしみ込んで化学反応を起こすので耐久性があります。粒子が細かいので非常に透明感があります。 3、接着剤で粒子を基底材に固着させているもの。 一般的に絵の具と言われるものの多くがこれですが、油彩画はポピー、リンシードなどの油を。水彩画はアラビアゴムなどの天然樹脂を。アクリル画やペンキはアクリルなど合成樹脂を。テンペラ画は卵などを。フレスコ画は石灰水をそれぞれ接着剤に用いています。これらの絵の具は接着剤を用いているので、固着力は高いのですが、接着剤の皮膜で粒子を覆うため、絵の具の発色が悪くなります。例えて言えば、乾燥した砂が白っぽいのに比べて、濡れた砂が黒っぽくなっている状態をイメージしていただければわかりやすいかと思います。乾燥していれば、砂が白く発色しますが、濡れると、どの色も濡れ色のグレーがかった感じになってしまいます。中でも一番顕著なのが、油絵の具です。油絵の具は粒子の表面を完全に覆ってしまうので、濡れた砂と同じように黒ずんで発色が鈍くなります。それが、油絵を見た時に独特な「ぬめー」とした質感になるわけです。それに比べて、水彩絵の具などは乾くと水分は蒸発してしまい、接着剤が粒子の下にだけ残り、表面は粒子の粒が露出します。そのために、粒子の上半分は乾いた状態で残るために、油絵の具よりは発色がいいわけです。 〈膠彩画(こうさいが)〉 では、日本画は上記3つのどれにあたるかというと、接着剤を用いて画面に粒子を固着させる3にあたります。接着剤は「膠」です。「膠」というのは、動物を捕って、肉を食べ、皮は衣服に使うと、残りのじん帯とか腱とか骨とかが残ります。そういうものをぐつぐつと煮たものです。それが非常に強力な接着剤になります。古来絵の具の接着剤としてだけでなく、木と木を張り合わせたり、つなげたりするのにも使われてきました。ちなみに、墨は「すす」をこの「膠」で固めたものです。この「膠」を接着剤として顔料を基底材(主に和紙もしくは絹)に描いていれば、概ね日本画という事になります。ですので、日本画を、油彩画や水彩画というように、素材名(接着剤名)で称するならば、「膠彩画」という言い方が正しいわけなのです。「膠彩画」も、水彩画と同様乾くと、水が蒸発して絵の具の表面は乾いた粒子が露出する上に、粒子が他の顔料に比べ荒く、そのため発色がとても高いのが特徴です。子供の頃、砂絵を描いた経験があるでしょうか? のりを紙に塗っておいて、その上から色砂を落とすと、のりのついたところだけ、色砂がくっついて、絵になる。というやつ。あれをイメージしてもらえれば、日本画の質感がなんとなく理解していただけると思います。もちろん日本画の場合は膠と顔料はいっしょに溶いて筆で画面に塗り(置き)ますが。できた感じとしてはあの砂絵に近い感じなのです。 | |||||||
新着情報 /作品 /略歴 /お知らせ /技法 / 紀行/対談 /草馬の絵 /作家紹介 /雑感 /遊び場 /夢工房 /掲示板 /ブログ /お便り /リンク /HOME | |||||||