大久野の藤

(東京都日ノ出町)

座ってずっと見続けていると、真っ昼間にも関わらず、不気味な想いにとらわれる。

最初大きな幹に気を取られて、他のツルに気がつかなかったが、ふと、回りを見渡すと、辺り一面地面から突き出している。

実はこの藤、近くにある樹という樹にとりついて、そのツルで、がんじがらめに絞り上げ、からめ取られた木々は、

その形が変形し、あるいは、すっかり朽ち果てているものもある。

その、怨念めいた老樹の姿態と、5月に咲く花の可憐さと、同じ一つの生命とは思えないその在りように、しばし、奇妙な想念にとらわれる。

自分が、そのやせ細った樹の一部となったような。

45cm×222cm

                        (日本画家伊東正次の襖絵)

(右側部分)

(左側部分)

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