「松樹図(『浪人の松』からイメージして)」

2008.6.17
100号F(162cm×130cm)


以前からずっと気になっていた松がありました。山梨県一宮町の国道20号線ぞいにある「浪人の松」です。
先端部分がやや欠けているものの、全体の枝振りは優雅。鶴が舞い降りてきた様をイメージして、舞鶴松というのがありますが、
まさしく、そんな感じの姿は、心惹かれるものでした。それだけではなく、この松はくぼ地にあったのですが、
根元部分が地表にかなり露出していて、その下をせせらぎが流れていたので、そばに国道さえなければ、おとぎ話のなかのたたずまいという感じでした。
 ところが、何度もいうように国道の脇に立っていて(そこにしばらく座っていると、トラックや乗用車の排気ガスでむせるようなそんな場所)、
これは環境が悪すぎると思っていた矢先、初めて出会った1年後くらいに、その場所を通りかかると、その姿がないのに気がつきました。車から降りて、
行ってみるとそこはぽかっりと空間が空いたままでした。
「なくてある」ということほど侘びしいものはない。空き地がなければ、それがあったことさえ気がつかないが、その空間が無意味に広くて、侘びしいのです。
これは、他の松がなくなった場所にもいえますが、松の為にとってあった空間だからこそ、なくなると、違和感があるのです。
 その松を描こうと思いながら、願いを果たせなかったので、それを写真から描くことにしました。それが原因か、この作品、当初からかなり難航しました。
描きはじめたのは2年も前でしたが、どんなにリアルに描き込んでも、空間が出てこないのです。数カ月描いてもまったく空間が出来てこないので、
半分あきらめかけていたのですが、どうしても絵に対して申し訳ない。というつもりで、どこかで、この絵自身に決着をつけなければと思っていました。
1年程ほおり投げていた絵を引っぱりだしてきて、一本一本松葉を描いた上から、思いきって胡分で全体に霞がかった様に変えました。
その結果、松の樹の空間というより、霧の持っている空間が生まれ、なんとか絵として魂を持ってもらうことが出来たような気がします。
本来は松樹だけで見せたかったのですが、本物の松を観る事ができないので、いかんともしがたく、こういう結果になってしまいました。

 でも、先にもいったように、霧の空間は出てきたように思うので、これはこれで、粘った結果だと思っています。
こうやって松の樹が一本一本なくなってゆくのは寂しい限りですが。


雪舟の里墨彩画コンクールで、奨励賞をいただきました。展覧会は九月頃岡山県総社市にて開催されます。詳しくはおって掲載いたします。

写真

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