「楓図(子延川の楓からイメージして)」         210cm×440cm 2019


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日本画家 伊東正次

 

 三重県伊賀市に子延川を遡ったところに樹齢400年と言われる楓の老木があります。幹回りも相当に太いのですが、四方に大きく枝を広げている姿も優美の一言に尽きます。ただ、この楓、樹の美しさのみならず、根元に大きな岩を抱えるように立っている姿も圧巻です。さらに、足元には子延川の清流が流れ、樹と岩と水が美しい景色を形作っています。その優美な楓に、二羽のルリビタキが配されています。真っ赤に紅葉する楓と瑠璃の色をした小鳥の色の対比が美しく表現されています。

 

 この作品は日本画で描かれていますが、洋画が画面のリアルさを追求し、均一な画面処理を心がけたのに比べて、日本画はより装飾的な画面を目指しました。その為に、洋画に比べて、それぞれの素材を活かすことを心がけています。岩絵の具、金箔、和紙、それに毛筆の筆致などを多用し、より装飾的な美しさを表現していると言えるでしょう。

 緋色の岩絵の具のザラザラとした質感は宝石を砕いたようなキラキラ感があります。和紙は山梨県身延町の西嶋和紙に依頼して作らせた麻紙という紙を用いました。和紙の原料である楮、三俣、麻をそれぞれ混ぜ合わせ作られているために、洋紙にはないそれらの繊維の質感が楽しめます。また、背景には金沢の金箔を用いました。直接張り込むと平面的になるので、今回は砂子という漆工芸などに使われる技法で細かく撒くようにしてより空間的に仕上げました。それぞれの素材の質感を最大限に生かし表現する。その辺りは、日本料理や着物などにも通じる日本の伝統的な文化だと言えるかもしれません

 

 今回、制作は日展の日本画で活躍する伊東正次画伯にお願いいたしました。画伯は、今までにもたくさんの襖絵を描いて来られました。西洋的なタブローでは、画面に「引き手」と呼ばれる取っ手を取り付けることはあり得ませんが、そういったタブローと違う、建築の装飾の一つとして空間全体を演出もまた現代のタブローに慣れた目から見ると新鮮に映るかもしれません。それらも踏まえながら優美な「襖絵の世界」をご堪能いただきましたら幸いです。

 

(2013.10.24)
 

(日本画家伊東正次の襖絵)

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全体図

 

東京駅の前に立つビル「クニエ」のロビー
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