2011.6.8
(194cm×130cm F120)
3月11日の震災直後から一月近くの間、絵がほとんど描けませんでした。
描けるようになったのが、四月なかば。それから、なんとか仕上げたという感じです。
この絵を御覧になった方の中には、津波に流され倒れた樹と、空を舞い飛ぶ烏の群れをイメージされる方もあるかと思いますが、
実際に下図を描いたのは震災のだいぶ前の1月の事です。
2年程前に多摩川で取材した倒木を今年は絵にしようと1月には下図を作りはじめ
下図自体は震災前のかなり早い段階で完成していました。
日春展の「散華図」も、震災の前に完成、搬入した作品ですが、
今となっては、予感していたかのような絵柄になっているような気もしないではありません。
こういうことって、後になって、「あの時はそういう気がしたんだ。」
というように回顧するものだと思いますが、
それにしても、「散華図」といい、この倒れた樹の根っこの上を群れ飛ぶ烏といい、
あまりにも、それを連想させる絵柄で、自分でも気が重くのしかかってきます。
当然ながら、本紙に描き始めたのは
震災後ですので、これはまちがいなく描くタッチや色に反影されたと思います。
展覧会後に作品を自宅に持ち帰り
毎日眺めていますが、空の重さだけはなんとかしたいとまだ、手を加えています。
言葉でいうのは難しいのですが、この震災後に僕に描けるものがあるとすれば、
『犠牲』と『救済』なのだろうか?
そんな想いをひきずりながら描いていくような気がします。
(日本画家伊東正次の襖絵)