「岩上独猿図」

〜「黒藤川の岩」からイメージして〜

2010.10.13
(227cm×182cm)

愛媛に帰省中、久万高原町の黒藤川で出会った岩の塊を描きました。
ここへは、何度か足を運んで描いていますが、川の両側が山というか崖というか、急峻な斜面になっていて、その谷間を川が流れています。

推測するには、その崖から何かのたびに、大きな岩が転げ落ちて来たのだと思います。
大きなものでは高さが10メートルくらいのものもあれば、おしなべて直径が数メートルくらいの岩が幾百、千と川に沿って転がっています。
おそらくこの岩も落ちて来て、他の岩に激突したか、真ん中からぱっくりと割れて、落ちています。
落ちていると言っても、その前に立てば、見上げる様な高さ5メートルくらいもあるような岩です。
その岩の本には流木が流れ着いてひっかかっています。そんな岩と流木と猿とを描きました。

猿はこの場にいたわけではないのですが、軽井沢に行った時に、林の中を野生の猿が集団で走り回っていました。
その時に猿を描いてみたいと思ったのですが、実は、この夏、愛媛の西海に海水浴にいったときに、やはり、海岸に出没いました。
僕たちの荷物もバックのチャックを閉めていたにもかかわらず、それを開けて、中身を外にほおり出されていたのですが、かなりの智慧もので、さらに、強気です。
僕たちは直接対峙することがなかったのですが、海から陸を見ていると、猿と格闘する海パン姿の若者の姿が見えました。どうやら子どもたちのおやつを盗んだようです。
棒っきれを持って、追い払おうとするのですが、自分よりも何倍もある人間に対して、一歩もひきません。
にらみ合いの末、人間が勝ったのか、戦利品は手に入ったからか、さっと逃げて行きました。

人間だって多かれ少なかれ、そういう部分がありますが、猿はその本能の部分を隠しませんから、その辺がおもしろいのかもしれません。
その後、動物園に猿山を観に行きましたが、それぞれの猿がそれぞれの様子でいるのがおもしろくて三時間ばかり眺めていましたが、全然飽きませんでした。
その時の猿の姿をイメージして描きました。

制作の方は、この作品を描き始めたのが8月末、当初、毎日、描いても描いても進んだ様な気がせず、どこを描いても今日も昨日も明日も同じ様なところを描いています。
おまけに、描いているのは「岩」と「枯れ木」それだけでも気持ちがつまってくる様な、圧迫感を感じながら、一度は、完成しないんじゃないかと、
投げ出しそうになりながら、なんとか完成にこぎ着けました。
ここ数年来の中では、描いている時の気持ちが一番大変だったかもしれません。

しばらくは、大きな岩を見たくないですね。次回は、菜の花畑とか、コスモス畑とか、そういう花のある絵を描きたいなと、今は思っています。

                                      (日本画家伊東正次の襖絵)

全体図
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部分6。
部分7
部分8
搬入です。

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