東京で唯一残った大桜。
かつて江戸には三十三本の名桜があったそうだが、明治中期にはそのほとんどが姿を消し、
戦後の東京になってからはただのひと株ものこっッていない(「巨樹を歩く」永瀬嘉平 )ということだそうだ。
あきる野市の山寺の一角に悠然とたっていて、花見時に行っても、巨樹の桜につきものの喧噪はないので、
ゆっくりと花を楽しむことができる。
昨年夏に描きに行って、途中のままになっていたスケッチを完成させる。
描いている時に、すぐ下にある小学校のプールからハンドマイクで喋る先生の声と小学生達の歓声が聞こえる。
「死んでる虫、3点。死んでプールのそこに沈んでいる虫5点。生きている虫10点。
早くとらないと、みんな森山先生にとられちゃうぞ。」
巨樹が生き残る条件のひとつは、人間に遠からず。近からず。ではないだろうか。
山中にこだまする先生と子どもたちの声に、ふとそんな思いにとらわれる。
74cm×180cm |
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